怪談図書館 桜井館長のお話
えらぶのイラブー話
学生時代の友人でTさんという沖縄の女性がいました
彼女の語る話は、関東甲信越で育った私には珍しい事ばかりで
時間があると「お茶とケーキをおごる」約束で、
そんな中から、印象的だった話を書いてみようと思います……
Tさんのお父さんは、海に続く浜を持ったホテルを経営しており
潜るのが非常に好きで、上手だったTさんは
夏休みになればお客さんを連れて、ホテル前の海で見所や
案内をしていました。
ある時、案内したお客さんの中には「モリ」を持った人がおり
ウミヘビが寄ってきたので、モリで狙ったが、
Tさんはいそいでその場所に行くと、
Tさんが近づいていくと、もう1匹のイラブーが出てきて
まるで人間がお辞儀をするかのように、身を折ったり、伸ばしたり
そういった動作を繰り返しています。
Tさんにはそれが、「勘弁してくれ、頼むから勘弁してくれ」
と言っているように見えて、ゆっくり後ろに下がって離れました
見ていると、2匹は泳いで消えて行きました。
しばらくして、ある暑い日の午後、Tさんが一人で泳いでいると
2匹のイラブーが泳いできました
見ていると、Tさんの周りを泳いで離れません
大人しいとはいえ、強い毒があるので警戒していると
2匹がだんだん、離れたり、
案内されているように感じたTさんが泳いでついていってみると
今まで見たこともないサンゴ礁のある場所につきました
気がつくとイラブーがいません……
「その場所は誰にも教えてないんだ」
そう言ってTさんは笑いました
「イラブーの恩返し、かもね」
と私がいうと、「あるかも」と真顔で言ったTさん
高いケーキを2個もおごった事も含め、